眠る時、私がイシュマールに寄り添うようにしていたはずだ。
けれど、朝目を覚ますとイシュマールに抱きしめられているのだ。
イシュマールにどうしたの?と聞いてもいつ抱き寄せたのかも覚えていない程無自覚らしい。
(・・・人肌恋しい、とか?)
「ん?どうかしたのか?」
ベッドに先に座ってイシュマールをじぃっと見つめている私を見て、不思議そうな顔をする。
「ねぇ・・・あんたってもしかして寂しがりやなの?」
「はぁ?!君は一体何を言ってるんだね?頭でも打ったのか?
いや打たなくても君は元々おかしな部分が・・・」
「うるさーーーい!!
私が質問してるの!答えて!」
がぁっと怒鳴るとイシュマールは少し考えるそぶりをする。
軽く咳払いをして、言葉を続ける。
「考えてはみたが、君に寂しがりやだと言われるような心当たりはないのだが」
「じゃあ、なんで朝起きた時私を抱きしめてるの?」
「・・・っ、それは」
「それは?」
私の視線から逃れるためなのか、私に背を向けてベッドに腰掛ける。
「ねーねー、それは!?」
「・・・なんでもない」
「なんでもなくないでしょー!」
イシュマールの背中に体当たりするように後ろから抱きつく。
ぎゅっと抱きついて、たまにイシュマールが私にするように耳朶に唇を寄せる。
「・・・っ!!君は!もう少し慎みというものを!」
「じゃあ答えて」
はむっとイシュマールの耳朶を口に含むとイシュマールの背中が震えた。
私を振りほどくかのようにイシュマールが振り返った。
顔はびっくりするくらい真っ赤だ。
「君のぬくもりが愛おしいからだ!」
そのまま腕を引かれるときつく抱きしめられる。
驚くほど強い力と、その言葉に私の思考も真っ白になる。
「・・・うん」
「君が無理やり言わせたくせに何だ、その反応は」
「だって、」
顔を見たくても、イシュマールの肩口に顔を押し付けられて全く動けない。
「イシュマールがそんな事言うなんて思わなかったんだもの」
「君は馬鹿だ」
「なんで、」
少し抱きしめる力が緩まったので勢い良く顔を上げると唇を塞がれる。
驚いて目を見開いてしまったけど、抱きしめていた手が私の頭を優しく撫でるから大人しく目を閉じた。
「私をこんなに煽って心の準備は出来ているんだろうな?」
「え・・・、あ」
私の返事なんて待たずにもう一度唇を塞がれた。
返事なんてイエス以外ありえない。
でも、ちょっとイシュマールに悪戯が過ぎたのかも。
その日はなかなか眠らせてもらえなかった。