変装(ルパカル)

ある日の昼過ぎのこと。
昼食が終わって思い思いに時間を過ごす。
私は、というと彼をじっと見つめていた。

「・・・カルディア」

呆れたように私を呼ぶ。
不思議そうに首をかしげると、手招きをされるのでそれに従って彼の元へ行く。

「お前はなんで俺をそんなにじーっと見てるんだ?」

「だって」

昨夜読んだ本は怪盗の物語だった。
自分ではない姿になって潜入して、物品について調査をし鮮やかに手に入れる。
ルパンもそんな事をやっているのかな、と考えるとドキドキした。
私自身ルパンに盗まれたのだけれど、普段はどんな風に盗みを行うんだろう

「ルパンって変装とか出来るの?」

「ん?そりゃ勿論俺は怪盗紳士だからな」

「意味分からない」

怪盗紳士=変装ではないと思うんだけど。
じぃっと見つめると彼の大きな手で髪をくしゃくしゃっとされる。

「・・・!ルパン」

「変装した俺を見たいのか?」

にやりと笑う彼に思わず見惚れる。
たまにこうやって子供みたいに笑う。
そんなルパンを見るとなぜだか頬が火照る。

「・・・ルパンは私以外の人を盗んだことあるの?」

私みたいな人はそんなにいないだろうけど、人を盗んでそのままこんな風に・・・
そう考えるとなぜだか胸が痛んだ。

「カルディア」

優しい声に誘われるように顔をあげればそっと口付けられた。
それから私に跪いて手の甲にも口付ける。

「この泥棒紳士、アルセーヌ・ルパン。貴女以外の女性の心は盗んでおりません。
信じていただけますか?レディ」

気障な台詞をいう時のルパンはいつもより大人びている。
何度触れられても、何度請われても私は彼への恋心を抑えられない。

「うん、信じてる」

少ない言葉で彼が私の気持ちを理解してしまうから困る。
ルパンはそうやって私のことを甘やかす
私も彼に対してそうでありたいのに、なかなかうまくいかないものだ。
だから跪いたままのルパンにぎゅっと抱きついてみせる。
余裕たっぷりだったルパンが息を飲むのを感じて私は微笑んだ。

「ルパン、大好き。
私以外の人、盗まないでね」

「当たり前だろ。
俺もお前を愛してるよ」

ぎゅっと抱きしめ返されて今度は私が息を飲む番だ。
いつまで経ってもルパンには敵わないな。
それも良いかもしれないと心の中でほほえんだ。

 

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