眩しい
目を開けていることさえ億劫になる
俺は、目を閉じた。
「冴木くん?」
「え?」
賑やかな雑踏。
立ち止まった俺を見上げて不思議そうな顔をしていた。
「ああ、悪い悪い」
何か適当な話題を探そうとして周囲へ視線をやるとウィンドウに飾られているそれに気付いた。
「これ、すっごい綺麗だとおもって」
「わぁ、ウェディングドレス・・・!」
星野は目を輝かせて、俺の視線の先にあるそれを見つめた。
彼女も女の子だ。やっぱりこういうものが好きなんだなと思うと、なぜだかほっとした。
「やっぱり星野もこういうの好きなんだ?」
「女の人は誰だって好きだと思うな」
「あー確かに」
二人してウェディングドレスの前で立ち止まっていると、まるで俺たちが恋人同士みたいだ。
そんなわけないのに。星野の肩が俺の腕にぶつかったとしても、俺はこいつの手を握ることも腰を抱き寄せることも出来ないのに。
「お前もいつか、こういうの着て誰かの隣歩くんだろうな」
目を閉じて、その光景を想像してみる。
純白のウェディングドレスを着て、愛しい誰かの元へ真っ赤な道を歩くんだろう。
ああ、それは-
「俺、そんな光景みたら泣いちゃいそうだなぁ」
「ふふ、なんで冴木くんが泣いちゃうの?」
「んー、なんでだろうな。正義を語り合った最高の同期が幸せになるところ見れるから・・・かな?」
道の先にいるのは俺じゃない。
おめでとうと声をかける場所にも俺はいない。
「結婚なんてまだまだ先の話・・・というより相手もいないんだけど。
そうだね、私もいつか・・・着れたらいいなぁ」
夢を語り合った時とは、また違う瞳。
その瞳にいつか俺は映るのだろうか。
まだ、見えない未来
「それよりも私達の同期への結婚祝いを探すのが先だよね。
ほら、急がないと選ぶ時間なくなっちゃう!」
いつまでも動けない俺を、星野は俺の腕を掴んで歩き出した。
その耳は、心なしか赤く見えた。
「ああ・・・そうだな」
おまえが、好きだよ。星野。
たとえ、おまえの未来に俺がいなくても。