18:00
「ヴィルヘルム、どうしたの?」
「なにが?」
「だっていつもそんな事言い出さないじゃない」
「今朝のお前見てたらやりたくなった」
「そう?」
「おう」
キッチンに二人で立つ。
いつもランが作っているのを傍で見たり、つまみ食いしたり、催促したりして隣にいる事は多い。
だけど、今は違う。
どう考えても大きさが足りてない(そりゃランのだから)エプロンを腰に巻いて、ランの隣にいる。
「で、何作るんだ?」
「ヴィルヘルムがお肉食べたいっていうからハンバーグだよ」
「肉丸めるのか?」
「丸める前に色々するんだよ」
ランは食材を用意するとたまねぎを俺に渡した。
「たまねぎの皮、むいてもらって良い?
白い部分が見えたらむくのやめていいから」
「おう、分かった」
手渡されたたまねぎの皮を一枚一枚むいていく。
普段こんな風に集中して何かをするなんて鍛錬以外ないからドキドキした。
白い部分が見えたらやめる、と何度も頭で繰り返しながらむいていくと白い部分がようやく現れた。
「これで良いか?」
「うん、ありがとう」
むいたたまねぎをランに手渡すと、それを細かく刻んでいく。
「お前って手先器用だな」
「そうかな」
「俺も剣でなら出来るかもしれねえけど」
「・・・それはちょっと違うかな」
ランは困ったように笑うと、次は何をするか丁寧に指示した。
きっとラン一人で支度すればもっと早くできただろう。
料理が完成した頃、いつもの食事の時間はとうに過ぎていた。
「悪かった」
「え、何が?」
「俺が余計なことしたから、遅くなっただろ」
エプロンを外して、元あった場所に戻す。
ランは俺の手に触れた。
「私、すごく嬉しいよ。
ヴィルヘルムが一緒にご飯作ってくれて」
「本当か?」
「うん。ありがとう、ヴィルヘルム」
「・・・おう」
「さあ、食べよ?」
テーブルについて、ランはいただきます、と言って二人で作ったハンバーグを口に運んだ。
「すっごい美味しい!ヴィルヘルムも食べて」
「ああ」
ランに促され、俺も口に運ぶ。
いつもランが作ってくれる料理はどれもうまい。
俺の好みを知りつくしているから、俺はランが作るものがなんだって一番好きだ。
「うまいな、これ」
「ふふ、でしょ?」
だけど二人で作った料理はうまいだけじゃなくて・・・
ランが嬉しそうに笑うから、胸の奥がなんだか暖かくなった。