14:00
週に1回、二人で買い物に出掛ける。
これが習慣になると、そこまで億劫じゃなくなった。
緑の滴亭に立ち寄って軽い休憩がてらコレットが用意してくれた軽食を口に運ぶ。
「なんだ、これ?」
「パンケーキです」
「パンケーキ?パンじゃないだろ、これ」
「ヴィルヘルム!そういうものなの!
ありがとう、コレット」
「いいえ、ごゆっくり」
コレットはランに微笑むと、別のテーブルへ注文を取りに向かった。
用意された皿にはホイップクリームと果物ですっかり埋まっている。
これのどこにパンとかケーキの要素があるんだろうか。
しげしげと見つめていると、ランがそこにフォークをいれた。
「はい、ヴィルヘルム」
「え」
フォークには確かにケーキのスポンジに似たものとたっぷりのクリームと木苺が乗っていた。
それを俺に差し出し、にっこりと笑っていた。
「あーん」
「ば、ばか!お前、何やってんだよ!恥ずかしいだろ!」
「いいから、早く!あーん」
「・・・あーん」
有無を言わせないランの言動に俺は仕方なく口を開いた。
そこに入るのはさっきのフォーク。
・・・甘い。
「どう?美味しい?」
「・・・悪くはない」
「ふふ。じゃあ私もいただきます」
ランは嬉しそうにそれを口に運んだ。
その満足げな表情を見つめていると、甘いものを食べてる時って凄く幸せだと前に言っていたのを思い出した。
「うまいか?」
「うんっ!すっごい美味しい!」
「良かったな」
カップに口をつけて、コーヒーで口の中の甘味を消してやる。
俺のその姿を見て、ランはもう一口俺の分を用意するのだった。