「七海何読んでるんだー?」
食堂で雑誌を読んでいると、乙丸さんがふらりとやってきた。
「占い見てた」
「へぇ、七海でもそういうの読むんだな」
隣の椅子に座り、雑誌を覗き込んでくる。
テーブルに広げ、一緒に見えるようにすると、乙丸さんが興味津々と言ったふうに読み始めた。
「えーとなになに?
血液型占い」
「うん。乙丸さんは何型?」
「俺はB型だよ。だからこれか?」
指でなぞっていくと、そこにたどり着いた。
「B型は『自己中心的で周囲を振り回す。人の意見を聞かない。束縛されることが嫌い。』だって」
「えぇ?俺、そんなんかなぁ?」
書いてある内容が納得いかないのか、乙丸さんはちょっとだけむっとして更に読み進める
「おだてられると弱い、かぁ・・・
まぁ、当たってるようなあたってないような?七海はなんて書いてあった?」
「私はAB型だから・・・
『裏表がある。感情を表に出さない。』」
「う~ん?裏表はあたってないけど、感情を表に出さないは当たってるか?」
「自分では分からない」
大体同じ血液型の人が世の中に何人いるというのだ。
それをこんな4パターンに分けられるわけがない。
だけど、なんとなく暇つぶし程度に読むには楽しい。
「あ、でもさ」
乙丸さんが私の顔を覗きこんで、微笑んだ。
「俺、七海になら束縛されてもいいな」
甘えるような視線で私を捉える。
その表情がいつもの乙丸さんと違って見えて・・・
頬が赤らむのを感じた。
「七海、顔真っ赤だぞ」
嬉しそうに笑って私の頭をくしゃくしゃと撫でる。
さっきの大人びた表情はもう影を潜めたようで、いつもの乙丸さんに戻っていた。
「乙丸さんはちょっとデリカシーが足りない」
「えぇ?そうか?」
「うん、だめ」
恥ずかしいのを誤魔化すように乙丸さんに軽口を言う。
雑誌に目を落とすと、B型の欄にはこんな風に書いてあった。
『好奇心旺盛で、自分がこれだと思ったものには、驚異的な集中力を発揮します。』
うん、乙丸さんはB型っていうのは当たっているのかも。
そう思うとなんだか面白くて、私は笑っていた。