君とずっと。(央撫)

昔から彼女に対しては、綺麗な子だという印象を抱いていた。それは何度同じ季節を迎えても同じことを思っていたし、あの頃よりもずっと綺麗になった彼女の隣に自分がいると思うと本当は凄く動揺している。
「央?」
二人で初詣に行くようになったのは付き合い始めてからだ。彼女は綺麗な振袖を着て俺の隣にいる。落ち着いた赤色の生地に桜の花があしらわれているそれはそれは彼女の白い肌と漆黒の髪に映えていた。
「ごめん、撫子ちゃんがあんまり綺麗だから見とれちゃった」
冗談めかすように本心を告げると、恥ずかしかったらしく眉間に皺を寄せて、ふいと顔を背けられた。
「撫子ちゃん、照れてる?」
「央はずるいわ」
そっと彼女の手に自分のそれを重ね、自然と指を絡める。握り返してくれる彼女に思わず笑みがこぼれた。
「俺からすれば、君の方がずるいけどね」
いつだって俺の心を掴んで離さないのは、君のそういうところだっていうのに。
「撫子ちゃん」
彼女がずるいとよく言う声色で俺は名前を呼ぶ。
「大好きだよ、今年もよろしくね」
俺の言葉に真っ赤になった彼女の顔を見て、俺は満足げに微笑んだ。

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