いつか貴方と花を愛でたい(終撫)

外に出ると茜色に染まっていた。
図書室に残って、勉強をしているとつい時間を忘れてしまう。
理一郎は今日、もう帰ってしまっているだろうし、私も早く帰ろう。
そんな時、ふとある人物に気付いた。

「終夜?」

花壇の前にしゃがみこんでいると姿はまぎれもなく終夜だ。
彼の元へ近寄ると、終夜は振り返った。

「おお、撫子ではないか」

「こんにちは、終夜。
そんなところで何してるの?」

「うむ。これを見ていたのだ」

終夜の隣に並んで屈むと、花壇から小さな芽が出ていることに気付いた。

「わあ・・・」

普段あまり見ていなかったけれど、こうやって芽を出す姿を見るのは新鮮だ。

「これはどうなるのだろうか」

「これはここから葉っぱが成長して、花を咲かせるのよ」

小さなプラカードが刺さっていて、そこにはチューリップと書かれていた。

「ほら、チューリップの花が咲くみたい」

「そうか」

終夜はその芽を愛おしいものだといわんばかりに優しく見つめていた。

「花が咲くころ・・・」

終夜の声が小さくて聞き取れなかった。
私が小首をかしげると、終夜は私に微笑みかけた。
その瞳は今、芽に向けていた愛情そのものみたいで心臓がどくんと脈打つ。

「撫子、この花が咲いたときは一緒に見よう」

「ええ、いいわよ」

私は小指を彼に差し出した。

「?」

「指切りしましょう、約束の」

「うむ、そうだな」

絡めた小指に約束を込めて。

 

 

 

 

 

-花が咲く頃、私と撫子は共にいることが出来るのだろうか
私は、そなたを守ることが出来るのだろうか

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