夜、突然夏侯淵が私の部屋を訪れた。
寝台に押し倒されるような形になったが、夏侯淵は私を抱きしめたままじっとしていた。
なんというか・・・大きな犬が飼い主に構ってほしくてじゃれてくるのに似ている気がする。
「夏侯淵?どうかしたの?」
「うるさい、黙れ」
抱きしめる力が少し強まる。
私は大人しく抱きしめられたままでいると、しばらくして雨音が耳に聞こえ始めた。
「・・・夏侯淵?」
「今日は、夜天気が崩れるって」
もしかして、私を心配して来てくれたのだろうか?
以前、雷に怯えた私を抱きしめてくれたことがあった。
あの日ももしかして、私を心配して部屋に来てくれたのだろうか。
「ありがとう」
「何がだよ」
「だって心配してくれたんでしょう?私のこと」
その気持ちが嬉しくて私は微笑むと噛み付くように口付けられる。
驚いて、そのまま夏侯淵を見つめていると、唇を離した夏侯淵が呆れたように言う。
「目くらい閉じろ、馬鹿」
もう一度唇が重なると、夏侯淵が私の目を手で覆う。
何も見えなくて、私の神経は過敏になっていく。
夏侯淵から与えられる刺激が、身体を駆け巡り、口付けに翻弄されて気付けば頭がぼぅっとしていた。
「おい、関羽」
「・・・、」
「口付けだけでそんな風になったらお前、その後どうするんだよ」
「その後って・・・」
想像しただけで恥ずかしい。
覆いかぶさる夏侯淵の胸を押しのけようと強く押すがびくともしない。「関羽」耳に息を吹きかけられ、びくりと身体が跳ねる。
夏侯淵の鼓動、息遣いがすぐ傍にあって私は激しく動揺していた。
その時、雷が落ちる音が響いて思わず夏侯淵にしがみついた。
「俺の腕の中にいるんだから俺の事以外考えてんじゃねえよ」
「かこ・・・えん」
ぎゅっと抱きしめ返されると少し息が苦しい。
「私が雷怖がるから、来てくれたんでしょう?」
確認したくて、私は言葉を紡ぐ。
すると思いも寄らぬ言葉が返ってきた。
「一緒にいたいからに決まってんだろう」
馬鹿、と悪態をつくともう一度口付けられた。
Heaven’s様「抱きしめたくなる10のお題 」