夜、チカイの部屋で過ごしていた。
うとうととする私を見つめるチカイの視線は優しい。
チカイは砂糖菓子のように私を甘やかしてしまう。
それと同時に彼も私に甘えてくれる。
蜂蜜が、とろりとろりとこぼれていくような、そんな感覚をチカイの部屋にいると感じていた。
「チカイの部屋はなんだか安らぎます」
「え~そう?」
チョコレートを食べながら、チカイは笑う。
子供みたいなチカイだけど、唐突に男の人になる瞬間がある。
今だってそう。
チョコレートを食べていたチカイの唇は、気付けば私の唇に触れている。
突然のキスを受け入れると、私の口内にもチョコレートの味が広がる。
「ねぇ、フウちゃん」
「はい」
ちゅ、ちゅ、と繰り返される口づけに私の思考は蕩けていた。
チカイに触れるのも、触れられるのもたまらなく愛おしいのだ。
私の手をそっと握ると、手に何かを握らされる。
ひんやりとした感触と、特徴あるその形。
「・・・これは?」
「んー?ここの部屋の鍵☆
フウちゃんがいつでも俺の部屋に入れるようにって用意してみましたっ」
「大丈夫なんですか?」
気持ちは嬉しいけれど、合鍵なんて、作って大丈夫なんだろうか。
不安げにチカイを見つめると、にっこりと微笑んで額に口付けられる。
「大丈夫大丈夫、ナナちゃんにはなんとなーく言ってあるから!」
チカイのことだからうまく言いくるめたんだろうな、と想像つく。
でも、チカイが私のために用意してくれたその鍵が嬉しかったから私は気にしないことにした。
「ありがとう、チカイ」
私からチカイの頬に口付けると、チカイは驚いたように私が触れた部分を手で抑えて顔を赤らめた。
「・・・チカイ?」
「フウちゃん、オレを誘惑したんだから覚悟できてるよね?」
「え?」
あっという間にチカイに押し倒されて視界は反転した。
「フウちゃんはオレのだーいすきな甘い甘いお菓子よりもずっと甘くて」
首筋に顔を埋めると、そのまま舌でなぞられる。
びくり、と身体が跳ねるとチカイは嬉しそうに笑った。
「フウちゃん、大好き」
私の返事なんて待たずにそう言って口付けた。
(私もです、チカイ・・・)
言葉に出来ないから、この口付けで伝わりますように。
そんな事を思いながら私は彼の背中に腕を回した。
Heaven’s様:「恋愛幸福論で10のお題 Ver.3」