「アイちゃん、何見てるの?」
「え?なんでもないよ!」
帰り道。
いつものように寄り道をしていると、アイちゃんがぼんやりとショーウインドウを見ていた。
その視線の先を見ると、大きなくまのぬいぐるみがあった。
「アイちゃんもまだまだ子供だなぁ」
「ち、違うよ!可愛いなって思ってただけで欲しかったわけじゃ・・・!!」
可愛いって思ってるんじゃん。
そんなところがまた可愛いんだけど。そういう事言ったらむくれてしまうので、追求はやめておこう。
「ほら、クレープ屋さんあるよ。
食べて帰ろう」
アイちゃんの手を取って、クレープ屋さんまで連れて行く。
当たり前のように手を繋ぐことが出来る幸福を、表面に出さないようにかみ締めながら。
「うーん、今日はチョコバナナにしようかな」
「えー、納豆スペシャルってあるよ?」
新商品!ってでかでかとそのクレープが紹介されていて、アイちゃんは凄く嫌そうな顔をした。
まぁ、正直俺もあげるって言われたらタダでもいらないね。
「私、普通の味が好きだもん」
「うん、知ってる。
今日は遅いし、はんぶんこしよ」
「うん、良いよ」
アイちゃんが食べたいっていうチョコバナナのクレープを買って、空いているベンチに二人で座った。
「はい、アキちゃんどうぞ」
自分が食べる前に俺へクレープを差し出す。
ぱくりと齧り付いて、クレープを頂く。
「美味しい?」
「うん、俺バナナ結構好きなんだ」
「へー、そうなんだ!」
アイちゃんもクレープをもぐもぐと食べる。
「だって俺、もしもアイちゃんと再会したらアイちゃんの事守れるようになりたかったから」
「ん?」
それとバナナがどう関係しているの?と目で言われる。
「バナナって栄養豊富でしょ?
身体強くできるかなーって」
「なるほど・・・」
少し恥ずかしそうに視線を俺からずらして、また一口クレープを食べる。
「・・・アキちゃんってずるいよね」
「何が?」
「そうやって、私を喜ばせるような事言うし」
この話で喜ぶんだ、可愛い。
狙って話したけど喜んでくれるならラッキーだ。
「アイちゃんが喜ぶならなんでもしてあげたい」
優しくしたいし、苛めたいし、振り回したい。
なんでも俺が与えてあげたい。
子供じみた独占欲を時折アイちゃんに見せて困らせてしまうけど。
アイちゃんが俺をもっと独占したいって思ってくれたら良いのにな。
アイちゃんはおねーちゃんだからなのか、あんまりそういう我侭を見せてくれない。
「・・・私は、アキちゃんが隣にいてくれるだけで嬉しいよ」
残っていたクレープを、うっかりぽかんと開けてしまった口に押し込まれる。
「ゴミ、捨ててくるね!」
頬を紅くしたアイちゃんは近くのゴミ箱へと走っていってしまった。
ごくん、と口につっこまれたクレープを飲み込む。
今、俺の顔も絶対赤い。
「反則だよ、アイちゃん・・・」
本当、俺をどれだけ惚れ込ませたら気が済むんだよ。