「フラン、一緒に寝てもいい?」
枕を抱えてやってきた彼女を見て、眼鏡がずり落ちた。
カルディアの身体から毒が抜けて、一緒に眠る日がほとんどだったけれど僕の研究が大詰めというか、
研究に区切りがつくころにはカルディアは眠ってしまっていて・・・というのが最近だった。
いや、僕の寝る時間まで彼女が無理をして起きているほうが心苦しいから眠っていてもらいたいという気持ちは強い。
毒を気にしなくて良くなってからは彼女は愛らしい真っ白なネグリジェを着て眠っている。
ふわりとした生地なのに、彼女の身体のラインをより一層綺麗に見せてくれるので、少しだけ目に毒だ。
「どうしたの?もう眠ってたのかと思った」
「・・・眠ってたんだけど」
彼女の足元にはシシィがいて、彼女のふくらはぎにすりすりと身体を寄せていた。
犬はいいな、と思ったのは内緒だ。
「その、怖い夢を見て・・・」
瞳は少し潤んでいて、どんな夢なのか聞くことを少しはばかられた。
手招きすると、ぎゅっと抱きしめてやる。
「いいよ、君が眠るまで傍にいるよ」
「うん・・・」
僕のベッドに一緒に入ると、カルディアにシーツをかけてやる。
彼女の髪を優しく梳いてやると、安心したように微笑まれる。
「フランと一緒にいると落ち着く」
「僕も、君といると安心するよ」
だからあんな風に申し訳なさそうに甘えないでいいのに。
僕は君のお願いならなんでも聞いちゃうのに。
「ねぇ、フラン。
明日は一緒にいられる?」
「・・・うん、買い物でも行こうか」
「本当?嬉しい」
研究は最近根をつめていたし、明日くらいゆっくりしてもバチは当たらないだろう。
「君といる時間は僕にとって宝物だからね」
「ふふ、くすぐったい」
髪をさわりながら、彼女の耳朶のラインもそっとなぞる。
彼女の笑う顔が好きだ。
泣いてる顔も困ってる顔もなんでも好きだけど、やっぱり笑っている顔が何よりも愛おしい。
無垢だった彼女が、少しでも僕の色に染まっていくのは幸福以外何物でもない。
僕だってきっと彼女色に染まっているんだろう。
嗚呼、恋は怖いな。
今までじゃ考えられなかったような独占欲や、愛情があふれる。
「さぁ、おやすみ」
「うん、おやすみなさい。フラン」
「おやすみ、カルディア。
良い夢を」
目を閉じた彼女の額にそっと口付けを落としてやる。
数刻後、彼女の寝息が聞こえた始めた。
「ああ、幸せだなぁ」
彼女の寝顔を見ながら自然と笑みがこぼれた。