犬も食わぬ(エイフラ)

「ねえ、ねえ!エイプリル!今日はフランシスカのところに行くんだけど、エイプリルも一緒にどうかしら」

街をふらふらと歩いていると見知った顔――アリアと出くわした。
開口一番に魅力的なお誘いを受けたものの、どうしたものか。

「ふむ。さて、どうしようかな」
「いつもならすぐ頷くのに…もしかしてフランシスカの事怒らせたの?」
「人聞きの悪い事を言わないでくれ、アリア。フランシスカが私に怒るのはいつもの事だろう」

自分で言ってて悲しくなるが、彼女はよく私に怒る。
他の女性たちは私の誘いにすぐ色めくのに、彼女は澄ました顔で私の誘いを袖にする。

「エイプリルが怒らせるような事をするからよ。そういうのは早く仲直りした方が良いわ!」
「おい、アリア」

私の腕を掴むと、アリアは鷹の屋敷に向かってずんずんと歩き出した。
彼女たちは仲が良い。天真爛漫なアリアと、それを姉のように面倒を見るフランシスカ。
澄ました顔ばかりしているフランシスカが、アリアといると穏やかな笑みを浮かべる事もある。
それが少し、私には羨ましくも思える。少しだが。

 

ようやく鷹の屋敷に着くとアリアは「私がいたらフランシスカと仲直り出来ないでしょう?そう言ってアリアはオルガを探しに階段を駆けて行った。

(やれやれ、アリアには困ったものだ)

顎を撫でながら、この後の行動について考える。
やはりフランシスカに会いに行くべきだろうと踏ん切りをつけ、私は彼女がいつもいる場所を探した。

「おや、いない」

てっきり庭にいると思いきや、姿は見えず。
侍女を捕まえて、尋ねてみると出かけている事が分かった。

(待つか、探しにいくか)

散々悩んだ私は、探しにいく事に決めた。

 

エイプリルはいい加減だ。よくあれで狼の当主が務まるものだと何度思ったか分からない。
数日前、些細な事で喧嘩をした。いつもなら日をおかずに屋敷に遊びに来るくせに今回は数日経っても現れない。

(もうあんな男は知らない)

お兄様の友人だけど、私には関係ない。
そう心に決めて、買い物を済ませて鷹の屋敷へと戻る。
外の空気を吸っていくぶん気持ちが落ち着いたようだ。そう思っていた矢先、私の目の前にエイプリルが現れた。

「やあ、フランシスカ」

軽薄な笑みを浮かべ、私に向かって手をあげるエイプリル。

「……」
「君に会うために屋敷を訪れたんだが、不在だったからね。街に探しに行こうと思っていたところなんだ」
「誰も探してほしいだなんて言ってないわ」
「私が探したかっただけだ」
「まあ、珍しい」

この男が私を探すだなんて。思わずエイプリルの顔を見上げると、彼は小さく笑った。

「ようやく私を見てくれたね、フランシスカ」
「! さっきも見たでしょう。人聞きの悪い事を言わないでくれるかしら」
「それは失礼。ようやく私を見つめる覚悟が出来たのかな」
「あら、あなたの方こそ大勢の女性に相手にされなくなっても良かったの?」
「欲しいものが手に入るんなら、それも悪くない」

この人はいつも軽薄な笑みを浮かべて、軽薄な台詞を言う。
お兄様の友人だなんて信じられないくらいいい加減な男だ。

「……冗談はやめてちょうだい」

だけど、どうしようもなく心を揺さぶられる瞬間がある。
怒らせた謝罪もなしに私の隣を当たり前のように歩くエイプリル。
怒っている私が馬鹿みたいに思えて肩の力が抜けてしまう。

「せっかくだ。今日は一緒に夕食でもどうかな」
「おあいにく様。アリアと予定があるの」
「アリアの事なら心配いらない。きっとオルガがなんとかするだろう」
「まあ、あなたって自分勝手ね」

エイプリルと軽口をたたきながら、屋敷へ向かう。
この時間があともう少し続けばいいのに、と思うくらいにはエイプリルの隣が好きなのだと私は致し方なく実感するのだった。

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