朝、身支度を終えた私は孝太郎さんの部屋へやってきた。
「孝太郎さん、おはようございます」
部屋に入り、中を見回しても姿が見つからず、寝室のドアを開けると低血圧な孝太郎さんはまだベッドでごろんと横になっていた。
「孝太郎さん、支度しないと遅刻しちゃいますよ」
ベッドに座り、孝太郎さんの肩を揺さぶる。次の瞬間、彼の腕が伸びてきてあっという間にベッドの中に引きずり込まれた。
「こ、孝太郎さ!?…んっ」
文句を言う唇は孝太郎さん自身のそれに塞がれて、言葉は最後まで言う事も出来ない。
段々深くなっていくキスに溺れないように彼の胸を叩くが、その手もからめとられてしまう。
「はっー」
ようやく唇が離れた頃には、すっかり私の瞳は潤みきっていて、私を見下ろす孝太郎さんを睨んでも全く怖くないのは分かっているが、少しでも伝わるようにキッと睨んだ。
「孝太郎さん…!」
「玲。言いたい事は分かってる。だけどそろそろ出ないと二人そろって遅刻しそうだ。」
名残惜しむように短いキスを私にすると、孝太郎さんはようやくベッドから起き上がった。
取り残されたのは私。
(言いたい事を確実に誤解されてるよね!?)
思わずベッドをバシバシと叩いていると、孝太郎さんの笑い声が耳に届く。
「それとも、今日は休んでずっとここにいようか?」
「仕事に行きます!!!」
慌ただしい朝。
それでも毎日キスを欠かさない孝太郎さんに私はいつも振り回されるのです。