穏やかな昼食(リュウ×詩生)

お兄ちゃんがいない土曜日。
午前中に学校が終わると、そのままリュウと一緒に家に帰った。

「あ、」
「どうしたの?」
「ケチャップが切れてたの忘れてた」

リュウはオムライスが好きだ。
チキンライスの上にふわふわの卵を乗せてから真ん中に包丁をいれる。
すると、トロリとした卵がチキンライスを覆う。
いつもその工程をリュウはじぃっと見つめている。
だからこうやって一緒にゆっくり過ごせる日はオムライスを作ることが多い。

「私ちょっと買ってくるね」
「いや、ボクがいってくる。君は料理の途中でしょ」
「じゃあお願いしてもいい?」
「ん」

こくりと頷き、リュウは出掛けていった。
オムライスは作れないから、その間にサラダとスープでも作っておこう。
スープにいれる人参を飾り切りする。
こういうちょっとしたことをリュウは喜んでくれる。
出会ったばかりの頃はリュウが何を考えているのかよく分からなかった。
けど、最近はちょっとした表情の違いにすぐ気付けるようになった。
・・・これが普通の彼氏彼女っていうことなのかな。
そんな風に思うと自然と笑みが零れた。
サラダはレタスと水菜、ミニトマト、コーンなどを盛り付けて完成。
あとはスープを煮込んで、リュウが帰って来るのを待つ。

 

 

がちゃ、とドアが開く音が聞こえたのですぐ玄関まで駆けた。

「おかえりなさい、リュウ」
「・・・ただいま」

手にぶら下げた買い物袋を受け取ろうと手を伸ばすと、それを理解したのかリュウが手渡してくれた。

「ありがとう」
「いいえ」

キッチンへ戻って支度の続きをしよう、とくるりと反転すると肩をリュウにつかまれ、抱きすくめられた。

「リュウ?」
「・・・キミがこうやって迎えに出てくれるのも、悪くないね」

大きなお屋敷で育ったリュウとトラ。
いつだってトラと一緒だっただろうが、実のお母さんは早くに他界し、彼らは様々な重責を強いられた。
リュウは、誰かにこうして触れることが少なかっただろう。

「一緒に暮らせるようになったら毎日おかえりって言うね」
「うん」

リュウの帰る場所。
リュウの安らぐ場所になりたい。
私は抱き締めてくれるリュウの腕にそっと触れた。
抱き締める腕の力が緩まると、身体を少し振り向かせられ、そのまま唇が重なった。

 

 

 

 

チキンライスに卵を乗せ、包丁でひらく。
それをじいっと見つめるリュウ。

「出来たよ、リュウ」
「ん」

リュウのオムライスには大きくハートを描いてみた。
ちょっと恥ずかしいけど、リュウが嬉しそうに笑った。

「いただきます」
「いただきます」

二人で手を合わせる。

「ん、おいしい」
「良かった」

昔はなかなか素直に美味しいって言ってくれなかったけど、素直じゃないリュウも可愛かったかもしれないって昔を思い出して微笑んでしまう。

「あ、」

スープのなかに入っている人参をみて、リュウが声を上げた。

「これ」
「あ、当たり!」

一つだけ、犬型にしてみたものがリュウのところに行ったようだ。

「・・・当たりか」
「うん、当たり」

いつだったか、一つしかない双子のいちごをリュウのお弁当にいれた時、リュウはなんでもない顔をして食べていたけど。
もしかしたら今みたく嬉しかったのかな。
リュウの微笑む顔をみて、幸せをかみ締めていた。

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