お昼寝の時間(ヴィルラン+子ども)

※オリジナルキャラとして二人の子どもが出てきます。苦手なかたは閲覧をご遠慮ください※

 

 

 

ヴィルヘルムの仕事は不規則だ。
学校に通っていた頃は基本的に土日はお休みだったけど、働くようになってからはそうもいかない。
3日働いて1日お休みとか、そういう時もあれば平日働いて土日お休みとか・・・とにかく色々だ。
今日は夜勤明けに新人に稽古をつける約束をしているとかでお昼を過ぎてもまだ帰ってこない。

「お母さん、いつお父さんかえってくるの?」
「うーん、もう少しかな?」
「さっきもそういったー」

もうお昼寝の時間だ。
眠いのを我慢しているからか、いつもならこれくらいでは不機嫌にならない娘もさすがに今日はご機嫌ななめだ。
ヴィオレッタは私の手をとり、ゆらしながら駄々をこねはじめる。
おそらく、あと1時間くらいかとは思うけど、それまで起きていられないだろう。
ヴィオレッタをどう説得しようか考えていると、先に子ども部屋で布団にもぐっていたはずのロニが目をこすりながら戻ってきた。

「ヴィオレッタ、ねるぞ」
「やだ、お父さんまってる」
「父ちゃんがかえってきたとき、ヴィオレッタがおきてたら父ちゃんおかしいなっておもうぞ」
「・・・でも」
「ほら」

私の手を掴んでいたヴィオレッタの手を、ロニがきゅっと握るとヴィオレッタは小さく頷いた。
眠そうな背中を私は見送りながら、子どもの成長を感じた。

「・・・ありがとう、ロニ」

ぱたんと小さな音をたててしまった子ども部屋に私はそっと感謝を伝えた。
それから30分も経たないうちに玄関のドアが開く音がした。
あまり大きな音をたてると寝たばかりの子どもたちが起きてしまうので、足音を忍ばせて玄関まで迎えに出る。

「おかえりなさい、ヴィルヘルム」
「おう、ただいま」「おなか空いてない?」
「あー、大丈夫だ。シャワー浴びてくる」
「うん、着替えは出しておくから」
「悪いな、頼む」

ヴィルヘルムがシャワーを浴びている間に着替えを出しておき、リビングに戻って編み物を再開する。
最近、レースの編み物にはまっていて、時間を見つけては少しずつ進めている。

「あー、さっぱりした」
「気持ち良かった?」
「ああ」

私の隣に座ると、じっと手元を見つめる。

「いつ見てもなんか良くわかんねえな、それ」
「もう・・・可愛いでしょ?」
「あーはいはい、そうだな」

ぽんぽんと私の頭に触れられると、なんだか昔を思い出した。
左側に感じる体温。それが凄く心地よい。

「あー、さすがにちょっと疲れたな」
「少し寝たら?子どもたちもお昼寝してるし」
「いや・・・寝ねーよ」
「まだ夕食まで時間もあるし」「・・・おまえと二人きりの時間だろ」
「・・・そうだね」

昼下がり、二人でこんな風に過ごすのは久しぶりだ。
何をするわけじゃないけど、こうやって寄り添っているだけで安心する。

「さっきね、ヴィオレッタがヴィルヘルムの帰りはまだかってぐずっちゃって」
「あー・・・そうか」
「でも、ロニがお昼寝に連れてってくれて助かっちゃった」
「あいつも男だな」
「ふふ、そうね」

何気ない会話。
何気ない時間。
そういうものがかけがえのない欠片になっていくのかな。

 

 

 

「-ってことがあってよ、」

仕事から帰り、ランと何気ない話をしているとこてんと肩にもたれてくる頭。
レース編みだとかいうのにはまったらしく、時間があれば黙々とよく分からないものを編んでいる。
ランの手からその編み物の道具やらを外し、テーブルへ置く。

「・・・お疲れさん」

眠るランにそう声をかけると、いつの間にか俺にまで睡魔が移ったのか。
気付けば意識を手放していた。

 

 

 

 

「お父さんかえってきてるー!」
「ヴィオレッタしずかにしろよ」

物音で目が覚めたらしいヴィオレッタに揺すられ目を覚ました。
ふたりでリビングへ行くと父ちゃんと母ちゃんがソファで眠っていた。

「あ、ロニ」
「ん?」

さっきオレが手をひいたように今度はヴィオレッタがオレの手をひいた。
子ども部屋に戻ると、さっきまでオレたちが使っていたタオルケットを手にとった。

「持っていってあげようよ」
「ああ、そうだな」

ふたりで協力してタオルケットを持つと、ソファでねむっている二人にかけてやる。

「お父さんあったかい」
「ああ、あったかいな。母ちゃんも」

ヴィオレッタは父ちゃんの膝を枕にするように丸まり、オレも父ちゃんの足にもたれた。

「おやすみ」
「おやすみなさい」

みんなのぬくもりに安心して、オレもヴィオレッタもまたすぐ眠ってしまった。
たまにはこうやってみんなでぎゅうぎゅうにくっついて寝るのも悪くない。

そんなある日の昼下がり。

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