「椅子」
「すき」
「切りくず」
「ずっと愛してるよ」
「・・・ねえ、あんた真面目にやる気ないでしょ」
「え、そんな事ないよ」
なかなか寝付けない夜。
それならしりとりをしようと言い出したセラに付き合って、しりとりを始めた。
なのに、さっきのようなやり取り。
これはしりとりではない。
「だって愛おしい王妃と一緒にいるんだから愛を伝えずにはいられないよ」
「あっそ」
ごろりと転がり、セラに身体を寄せる。
今ではもうすっかり慣れた左側にあるぬくもりに安心する。
「どうしたの?アスパシア」
「ん、なんでもないよ。しりとりはお終いね」
「少しは眠くなった?」
わたしの頬にセラが触れる。
頬にかかった髪をそっとはらうと、そのままわたしの後頭部を優しく撫でる。
その手つきが心地よくて、さっきまでは全然眠くなかったのに気付けば目蓋が重くなっていく。
「ねえ、セラ」
「ん?」
今眠ってしまうのはなんだか勿体無い気がして、わたしは頑張って目を開ける。
セラは愛おしいものを見るようにわたしを見つめていた。
そんなセラに手を伸ばし、彼がわたしにしてくれているように頭をなでる。
セラの髪は、わたしの髪より少し固い気がする。
それは人間と魔神の違いなのかどうかはわたしには分からない。
だってわたしはセラにしかこうやって触れないから
「わたしもセラがすき」
「・・・っ、アスパシア」
「ふふ、なんて顔してるの」
自分からは散々愛の言葉を伝えてくるのに。
わたしから言われるのはまだ慣れないみたい。
そういうところ、好きだなって思ってるわたしもいる。
「アスパシア、」
優しくなでていた手はわたしとセラの距離をぐっと近づけた。
触れるギリギリでセラが笑う。
「口付けても、いい?」
「・・・だめなわけないでしょ」
目を閉じるとほぼ同時に唇が重なった。
眠りにつくのは、もう少し先になりそう。