「ラスティン・・・そんなに見つめられると食べづらい」
「ん?」
今日は休日。
普段は休日といっても、暁の鷹のことで潰れてしまうことが最近は多かったんだけど
ようやく少しゆっくりする時間が出来たといってラスティンは私を街へと誘ってくれた。
ラスティンおすすめの生クリームたっぷりのパンケーキを頬張っていると嬉しそうにラスティンが私を見つめていた。
その視線に気付いてからパンケーキを口へ運ぶ速度が遅くなった。
「俺、ランが嬉しそうに食べるの見るの好きなんだ」
「・・・食べづらいよ」
「俺が食べるの見てていいから」
「ラスティンは食べづらくないんでしょ?」
「ランの視線を独り占めって思うとぐっと来るかな」
「・・・」
さっきより小さく切ったパンケーキを口へ運ぶ。
恥ずかしさを誤魔化すように珈琲を飲むラスティンにフォークにさしたパンケーキを差し出した。
「はい、ラスティン」
「え?」
「ラスティンも食べて」
「ランが食べさせてくれるんだ?」
「・・・う、うん」
にっこりと笑うとラスティンは口を開けた。
「はい、あーん」
「・・・っ!?」
思わずフォークを落としそうになったが、強く握りなおす。
ラスティンは楽しげに私を見つめている。
「ほら、食べさせてくれるならあーんっていってくれないと」
「・・・っ」
「ラン」
「・・・あーん」
「あーん」
恥ずかしさで顔が熱い。
ラスティンは嬉しそうに口をあけて、私が運ぶパンケーキを待ちわびる。
ラスティンはずるい。
いつも余裕たっぷりで、私ばっかりドキドキさせて。
パンケーキを口にいれるとそれをご機嫌に咀嚼する。
「うん、うまいね」
たまには私も彼をドキドキさせたい。
周囲をちらりと見渡すと、それなりにお客さんはいるがみんな目の前のパンケーキに気をとられている。
私はメニューを持ち上げて、ラスティンに顔を近づける。
「ラン?・・・っ」
メニューで顔を覆って、周囲に気付かれないような一瞬の口付け。
驚いたようにラスティンは目をみはった。
ドキドキさせたくて、思い切って行動してみたけれど恥ずかしさに負けてすぐ席に座りなおした。
「・・・おかえし」
「それは反則」
ラスティンはテーブルに突っ伏してしまった。
「ねえ、今夜は外泊届け出さない?」
上目遣いに私を見つめてそうねだるラスティンの熱っぽい瞳に私は頷く以外できなかった。