手と手(千こは)

※LEの暁人ルート後の千こはだと思ってください

 

 

 

 

千里くんと二人で暮らすようになり、それぞれ仕事をしているので一日一緒にいられる時間がない。
千里くんも仕事が詰まっている時以外は夜遅くまで作業はせず、一緒に布団に入ってくれる。

「千里くん、明日は久しぶりに一緒のお休みですね!」

「そうですね」

布団の中、手を繋ぐ。
暗い中、目が慣れてきて少しだけ千里くんの表情が分かる。
千里くんの笑う顔が好き。
ふわりと笑ってくれるとき、すごく幸せな気持ちになる。

「千里くん」

「なんですか、こはるさん」

少しだけ繋いでいる手を強く握る。

「千里くんのこと、だいすきです」

「・・・・っ
僕も・・・大好きですよ」

「ふふ、良かったです」

千里くんが動く気配がする。
繋いだ手はそのままで、もう片方の手で私の額にかかる髪をよけるとやわらかいものが触れた。
それが千里くんの唇だと理解したのは千里くんが自分の布団に潜ってしまってからだった。

「せ、千里くんっ・・・!!」

「おやすみなさい、こはるさん」

繋いだ手はそのままで、その後何回呼びかけても千里くんは返事をしてくれなかった。
私はさっきの千里くんのキスにドキドキしてしまい、なかなか寝付けなかった。

 

 

 

 

 

翌日、二人で久しぶりに街へ買い物に出掛けた。
昨夜のように手を繋ぐ。

「今日はどこに行きましょうか」

「こはるさん、何か欲しいものはないんですか?」

「えーと・・・あ!お醤油が切れかけていたので欲しいです!」

「そういう消耗品じゃなくて・・・もっとこう、女の人が欲しがるような」

「え?」

「いや、いいです。お醤油を買うのは最後にしましょう。
先に買ったら邪魔になります」

「そうですね!危ないところでした!
千里くんと二人でお出かけが嬉しくて、ついはしゃいでしまいそうです」

気をつけないと、千里くんに迷惑をかけてしまう。
だけど、千里くんは先に気付いて教えてくれる事が多いのでつい安心してしまう。

「・・・っ。行きましょ、こはるさん」

光の当たり具合なのか、なんだか千里くんの顔が赤らんでいる気がする。
思わず見つめると、手を引かれてしまったので歩き始めた。

 

 

それから千里くんと服屋さんを見たり、雑貨屋さんに入ったり、買い食いをした。
最後にはきちんとお醤油も買って、帰路に着くところだ。

 

「今日はすっごく楽しかったです!ありがとうございます、千里くん」

「僕も楽しかったです、ありがとうございます。こはるさん」

今日は嬉しくてずっと笑っていた気がする。
やっぱり一日ずっと一緒にいられるって特別な事で幸せだな。
そんな事を考えていると、千里くんがポケットから包みを取り出した。

「これ、こはるさんにプレゼントです」

「え?」

「受け取ってもらえますか?」

包みを千里くんから受け取る。
それは手のひらに乗るサイズのものだった。

「ありがとうございます!あけてもいいですか?」

「はい」

了承を得ると、包みを開けた。
そこにあったのは淡い水色と桃色が入り混じったような綺麗な色をしたバレッタだった。

「いつも同じのつけてるでしょう?
たまには気分が変わるかなって」

「嬉しいですっ!すっごく嬉しいです!
嬉しくて、こればっかり使っちゃいそうです!」

千里くんが選んでくれたそのバレッタを抱き締める。

「雑貨屋さんでこはるさんがこれ見てたから・・・」

雑貨屋さんに行ったとき、確かにこれを見ていた。
けど、それは長い時間じゃなくて、一瞬のようなものだ。
それに気付いてくれるなんて。
嬉しさがじわじわと足元から昇ってくるようだ。

「千里くん、大好きです!」

もう我慢出来なくて、目の前にいる千里くんに飛びついた。
千里くんは一歩後ろに下がったが、きちんと私を抱きとめてくれた。

「僕も好きです、こはるさん」

嬉しさのあまり、触れるだけのキスを私からすると千里くんからもお返しのキスを貰った。
その日以来、私は予想したとおり、千里くんが贈ってくれたバレットばかり使うようになった。
そんな私を見て、千里くんは優しく微笑んでくれる。
千里くんと過ごす日々が、どうしようもないくらい幸せだ。

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