ちょっと遅くなったけど、ランチにサンドウィッチを作った。
インピーが作るものには劣るけれど、私が作るとインピーは凄く喜ぶから彼に差し入れるときは出来る限り頑張っている。
「インピー、ご飯にしよ?」
「お!カルディアちゃん、待ってましたーっ!」
インピーは少し煤けていたけれど、私の姿を見て嬉しそうに笑ってくれた。
近くの箱の上にトレイを載せ、彼にサンドウィッチと紅茶を渡した。
「いやー、俺は幸せ者だなー。
こんな綺麗なお嫁さんに手料理作ってもらえて」
「お嫁さんって」
嬉しいけど、その言葉はすごく恥ずかしい。
私たちは全然触れ合うことが出来ないのに、それでも生涯共にいてほしいと、インピーは私に言ってくれた。
私はなんて幸せ者なんだろう。
気恥ずかしくて、なんとなく空を見上げた。
「あ、インピー。見て」
ふと顔を上げれば、たまたま視界に入ったそれは飛行機雲。
インピーもそれを見上げてくれて、二人でしばしそれを眺めた。
「ねぇ、カルディアちゃん」
サンドウィッチを食べながら、空いてる左手が私の右手に重なる。
私の手よりも一回り以上大きな手。
インピーが触れてくれるのが、凄く凄く嬉しい。
手袋越しに感じる彼の体温も全部私を愛してくれてることが幸せでそのまま窒息死してしまいそう。
「二人で空を飛んだっていうか・・・落ちたときのこと覚えてる?」
「・・・覚えてるに決まってる」
あの時、私はインピーを愛しているって自覚したのだから。
最初の印象は変な人。
私に変なことばかり言うなぁってずっと思ってた。
多分仲良くなれないって思ってたのに。
気付いたらインピーのことが好きになっていた。
インピーが笑ってくれるだけで大丈夫だって思えた。
あんなに遠い月も、いつか手を伸ばせば届いてしまうんじゃないかって思えた。
「だよねー。
俺の気持ち伝わって嬉しかった。
今もこうして隣にカルディアちゃんがいてくれるだけで俺は幸せだよ」
「私も。幸せだよ」
重ねられた手がいつか、こんな布ごしじゃなくなる日が来ますように。
そうならなくても・・・きっと私たちはこうして体温を感じながら、寄り添える。
「いつか、二人で月へ行こう」
「うん、行こうね」
二人で、また空を飛ぶ日まで。
私たちの夢はいつまでも。