ニルヴァーナは、女が少ない。
それはまぁ、周囲を見渡せばすぐ分かる。
そして、これもすぐ分かることだが、そんな少ない女の中でもあいつは目立つ。
「あー・・・だりぃ」
座学にようやく慣れ始めたとはいえ、一つの部屋に大勢の生徒が押し込められてなんやかんやと聞かされる。
そういう事には向いていない性質だということは十分分かっているのだ。
寝ないで聞かないと駄目なんだから!とランに言われてるから割と頑張っている。
そのせいで座学が終わった頃にはすっかり疲れ果ててしまっている。
これなら訓練で身体動かしてるほうが全然疲れないぞ。
ぐったりしつつ、壁に寄りかかってしゃがんでいるとパタパタと走る音が聞こえた。
足音で分かる、ランだ。
顔を上げれば、思ったとおりの人物が目の前に現れた。
「こんなところで座りこんでどうしたの?大丈夫?」
「いや、気力使い果たしただけだ」
それにしても・・・・だ。
普段は俺の方が目線高いからあんまり意識しなかったんだが、こいつのスカート短いんじゃないか?
他の女のを意識して見てないから分からないし、そもそも他の奴はどうでもいい。
こうやって駆けてくるとスカートが跳ねる。
つまり、中が見えそうになる。
いやいや、中見ていいの俺だけだし。
男子寮で誰が可愛いやらなんやらっていう話題の時、こいつの名前が入っていたことだって知っている。
(俺が聞いてると気付いて、そいつらみんな押し黙ったけど)
「おい」
よいしょ、と立ち上がりランを見下ろす。
不思議そうに小首をかしげるランにため息を漏らす。
着ていたシャツを脱ぐと、ランの腰に回して袖の部分を腹のあたりで結ぶ。
「どうしたの?急に」
「今日冷えるだろ、腹壊すぞ」
「私にこんな事したらヴィルヘルムが寒いんじゃ」
「俺は頑丈だから良いんだよ!」
誤魔化すようにランの頭をくしゃくしゃと撫で回し、肌寒いのを誤魔化した。
結局その後、くしゃみをする俺を見てシャツを返してきたのだが
それから、俺の真意を悟ったのか悟らなかったのか、あまり走り回らなくなったような気がする。