欲しいもの(平七)

※ちょっとヤンデレ

 

 

 

 

二人の間には何かあるんだろうということは暁人の七海に対する態度を見ていれば分かった。
あと、七海が暁人を見つめる瞳、とか。
仲良くなれ、とは言わないけど七海が悲しいような寂しいような安心したような・・・
なんともいえない表情を浮かべているのを、俺は心を乱さないで見つめていた。

 

 

 

 

「七海」

「・・・乙丸さん、どうしたの?」

「トランプ、するか」

「うん」

暁人を探していたのだろうか。
七海は少し考える仕草を見せたけど、俺の提案にこくりと頷いた。

「じゃあ、行こうぜ」

「・・・乙丸さん、手」

だって同じ場所にいくんだから手を繋いだ方が安心できる。
暁人とは手錠でつながれて過ごしていた時もあったんだから良いだろう?
返事の代わりに手を強く握る。
だけど、七海は俺の手を握り返してはくれなかった。

部屋に着くと、俺の後ろにいる七海の気配に怯えが混じった。

「・・・加賀見さんは、まだ来ないの?」

「ん?一月は来ないよ」

「でも、トランプ・・・」

「うん、あとでしような」

「・・・乙丸さん」

振り返って笑いかけると、七海は一歩後ずさった。
俺から伝わる気持ち、分からないだろう?
だって今すっげー頑張って隠してる。

「俺さ、七海と暁人の間には何かあるんだなって分かってる」

「・・・っ」

「暁人は七海にきついから、七海がちょっと可哀想だなって思ってた。
だけど最近は暁人と仲良くなってきたんだろうな。
七海が嬉しそうな顔して暁人の隣にいることが増えたよな」

空いている手で七海のネクタイを強く掴む。
これは俺があげたネクタイ。
女の子なんだから赤とか可愛い色つければ良いのに、とも思ったけど
俺が使っていたものを身に着けてくれていた事に喜んでいる自分がいた。
ああ、七海が欲しいんだ。
ようやく気付いたんだ。

「七海、七海」

掴んでいたネクタイを強くひくと、七海が苦しそうに表情をゆがめた。
繋いでいた手を離し、そのまま抱き締める。
俺、七海が欲しいんだー

「乙丸さん、お願い・・・離して」

「七海」

ずっと俺の腕のなかにいればいいのに。
そうすれば悲しそうな顔も嬉しそうな顔も全部全部俺のものなのに。

「七海を俺にくれよ」

噛み付くように口付けると、恥ずかしいのか腕のなかで七海が暴れる。
逃げる舌を追いかけて、絡めると段々息が上がっていく。
七海の口から微かに零れる嬌声。
なんだ、七海もやっぱり俺のことが好きなんだ。

「すきだよ、七海」

唇を離した合間に伝える。
七海の瞳から、歓喜の涙が一筋零れた。

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