久しぶりにガラハットと二人でニムエ様の湖へやってきた。
まわりも私たちの関係は理解しているから、気を使って二人きりにしてくれることが多々ある。
けれど、王の務めはやはり忙しく、以前のようには二人で過ごす時間が作れないでいた。
それは私が前よりも王様らしくなれてきたのかな、と喜ぶべき事ではあるのだけれど。
「・・・なに?」
「ううん、ガラハットが隣にいるなぁって」
やっぱりこうして、好きな人と過ごせる時間が減るのは寂しい。
早起きして作ったお弁当を黙々と食べるガラハットを見つめて、私は幸せをかみ締めていた。
ふと、何かを考えるようにじっと湖を見つめたかと思えば、ガラハットは私の膝の上に頭を乗せた。
「ガラハット?」
「・・・」
身体を横向きにし、私の身体へと背を向けるような体制で寝転んでいるが、顔を覗き込めば耳まで赤くなっていることに気付いた。
彼の頬にかかる髪をそっと指ではらい、私はそのままガラハットの頭を優しくなで始めた。
「なに、その顔」
ちらりと私を見上げると、不服そうに呟く。
「え?」
「すっごいにこにこしてるよ、顔」
指摘されなくても気付いていた。
ガラハットがこうやって甘えてくれることが嬉しくて、ついつい頬が緩んでしまう
「幸せだからかな」
「・・・っ」
ガラハットが息を飲む。
ガラハットは分かりやすく照れるから愛おしい。
出会ったばかりのころは彼の感情の動きなんて全く分からずに怒られてばかりだった。
何気ない時間を積み重ねていく事によって、お互いの些細な癖が分かるようになるのが幸せだ。
そっと顔を近づけて、彼の耳元に口付ける。
私が顔を離す頃には驚いて起き上がっていた。
「アル・・・君は、」
起き上がったかと思えばそのままとすん、と肩を押されて私の視界は反転した。
頭をぶつけないように、とガラハットの手が私の後頭部と地面の間に差し込まれる。
あ、と思う間もなくガラハットから口付けられた。
ひんやりとした唇なのに、いつの間にか互いの熱を分け合うかのように熱くなる。
長い口付けから解放されると、やはり不服そうな顔をしたガラハットがいた。
「どうしたの?そんな表情をして」
ガラハットの頬に手を伸ばして、そっと触れる。
幼子が母親の手を求めるかのように、ガラハットは私の手に自分の手を重ねた。
「アルはずるい」
私からすればガラハットの方がずるいんだけどな。
可愛いな、と思わせる面もあれば急に男の人の表情になって私を求める。
それが少し恥ずかしくて、とても嬉しい。
「ガラハット」
名前を呼ぶと、彼の瞳には私が映りこんだ。
空いているもう片方の手を彼の首にまわして、ぐいっと引き寄せる。
唇が近づいたその時、今度は私から彼の唇を奪う。
「・・・・っはぁ、アル?」
「ずるいって言ったお返しよ」
私からの口付けで頬を赤らめていたガラハットは、にっこりと笑う私を見てこう言った。
「・・・やっぱりアルはずるい」